ナビゲーション

竹島先生からのメッセージ

「発達に遅れがある」、「発達障がいの疑い」と言われたら

「発達に遅れがある」、「発達障がいの疑い」、または、ASD、ADHDこういった言葉を聞いて、大きなショックを受けられた保護者がほとんどでしょう。先の不安とともに、何をしたら良いのか、途方にくれた方も多いでしょう。保護者の気持ちは保護者にしかわからないかもしれませんし、専門家が代わってあげられることでもありません。ただ発達の遅れがある場合、出来るだけ早い段階で働きかけを始めることがベストであると研究者の意見は一致しています。「発達に遅れがある」、「発達障がいの疑い」ということを簡単な言葉に言い換えると、「新しいことを学ぶことがゆっくりである」または「できることとできないことの凸凹が大きい」と言うことです。どう教えれば、出来るだけたくさんのことを学び発達の凸凹を克服できるのか?単純な正解があるわけではないのですが、まずは子どもの学びの特徴に合わせた教え方を見つけるために、一歩踏み出すことが急務になるのです。

専門家から最初に伝えられたことが「(本当に診断名がつくのか)様子を見ましょう」だった人もおられると思います。「もしかしたら見誤りかも」 と言う気持ちはわかりますが、様子を見るということには賛成ができません。むしろ診断名の有無にとらわれる必要はありません。「障がい」があるかないかではなく、その子の人生において「困りごと」や「心配ごと」があるかないかを考えてください。療育というものは、そのお子様の特徴に 合わせて、プログラムを作っていくものです。「それぞれの子に良いこと」であれば、すぐにでも始めたら良いと思いませんか。その子の特性やその時の調子に柔軟に合わせてくれて、子どもに合う教え方を模索していく、そんなプログラムを選べると良いでしょう。

発達に遅れがある子どもに関して、すでに世界中の研究者が、知識を積み上げています。まずは遅れのある子どもの特性についての研究です。どんな癖があるのか?どんなことを学ぶのが難しいのか? そして、どんな問題がおこりやすいのか?特徴的な行動をまとめて、 「診断と統計のマニュアル」という体系にして発表されています。また特性だけでなく、様々な教え方を試し、その効果の有効性についての研究も積み上がってきています。エルチェは、子どもの支援に ABA(応用行動分析学)という学問体系を選択していますが、それ はエビデンス(過去の研究による証明)が一番確固としたものだからです。

エルチェの選択するABAは、固定的な技法や教え方に偏ったものではありません。「行動を変えることで問題を解決する」という考え方の原則は変わりませんが、子どもたち一人一人の行動の特徴やその理由を分析して対応を変えたり、その時の指示内容や褒め方のタイミングを柔軟に変えたりすることが必要だからです。

ABAを端的にまとめると、「できないこと」を、より細かく丁寧に教えることで「できること」に変えていき、「できること」を1つ1つ積み上げるやり方です。非常に手間と時間がかかる教え方の1つです。例えば偏食の生徒に食べさせるには、見えないくらい小さな お野菜の端きれを食べさせるところから始め、徐々により大きなサイズのお野菜に増やしていく方法をとるかもしれません。この方法では、保護者が望む「お野菜をしっかりと食べる」ところに至るまで、もしかしたら、半年、いや1年以上かかるかもしれません。

これと比較して「無理をさせては行けません。自分で食べられるようになるまで待ちましょう。」というやり方もあります。条件によってどちらが正しいとは必ずしも言えませんが、ABAのやり方の「できたよ、の積み重ね」「(ほんのちょっとでも)成功できる喜び」「前に進んでいる充実感」というのは、子どもにとっても保護者にとっても、そして我々にとっても他に代え難いものです。

ABAの教え方は、誰にでもできるものです。例えば良い行動をしっかりと褒めて伸ばすなど、当たり前のことも含みます。誰もが毎日 のように知らないうちに行動を変えたり変えられたりして生活しているのです。ご家庭の保護者でも、学校の先生でも、ABAなど知らなくても「ABA的にセンスの良い」方はいくらでも存在します。ただ行動変容の結果は、必ずしもその場で確認できないことも分かっています。

行動の変化は、その場ではなく時間が経って起こることが多いのです。ABAの専門家はデータを取ることで、その場で確認できない行動の変化を数値で確認しながら進みます。「発達の遅れ」がある場合、他の子どもが3分で学ぶことを、もしかすると3ヶ月かけて丁寧に教える必要があるかもしれません。難しい行動や大きな行動の変容を期待するには、やはり専門家のガイダンスが圧倒的に有利になるのです。

行動の変化と言うと難しく聞こえるかもしれませんが、オリンピック選手からビジネス行動まで、実は幅広い行動にABAは応用されている学問分野です。お子様に限らずご自身の行動も含めて、まずは望ましい行動を褒めて増やすことから、できないことはスモールステップにして教えることから、始めませんか?エルチェでは、ABAを指針・主軸にして、障がいの有無などにとらわれない、それぞれの個性やその時の条件に合わせた、地道でも 着実に効果のある、教育・子育てをお手伝いします。

最高臨床責任者、心理学博士、
認定行動分析士(BCBA-D) 、公認心理師
竹島 浩司 KOJI TAKESHIMA