やる気を高めるにはどうしたら良いの?
「いつやる気になるの?」のコラムも合わせてご覧ください。
前回の「いつやる気になるの?」では、子どもの「欲しい」という動機を見つけて、その時を利用して物事を教える方法を紹介しました。今回はこの方法に加えて、こちらから動機を効果的に作り出す事も出来ます。例えば、子どもの好きな物がジュースであれば、ジュースには子どもの開けられないキャップをつけることで、「欲しいけれど手に入らない」状態を作り上げられます。つまり親にとっては、「やる気になった時(何かを教えられる機会)」を作り上げたことになるのです。冷蔵庫やお菓子の戸棚に子どもが自分で開けられないようなチャイルドロックをつければ、開けて欲しい時に何か課題を与えられます。子どもが好きなコップがあれば逆に嫌いなコップを手渡せば、それは親の意地悪ではなく、好きなコップをしっかりと口に出して(例「赤じゃなくてプーさんの黄色いコップ」)要求する練習の機会を作り上げられるのです。こういった細かな準備で子どもが親に頼まなければいけない状況は大きく増えます。
注意点としては、ご飯や休息は生きるために必要なものですよね。それを与えることは基本的人権なので、「課題をやらなければご飯をあげない」は行き過ぎた指導になります。しかし、オヤツ、コップの種類、見たいテレビ、キャラクター、座る場所などは、生きるために必要なものではなくて、あったら嬉しいものですよね。ですから、特に頑張った子どもに与えられる特別なご褒美にすることで、「頑張れば大好きな物が手に入る」形にしてあげれば良いのです。たとえばお片付けとか、お手伝いとか、頑張って服を着るとか、新しいことに挑戦するとか、ちょっと面倒くさいことへの動機付けとして使うことが出来るのです。新しいことに挑戦したり、ちょっと練習して頑張ることって、やって見たら楽しいこともありますよね?勉強にだって勉強の喜びはあります。ただ、取り掛かりの部分が難しいのです。イマイチ気が乗らないことへの一押しが、好きなキャラクターであっても、ジュースであっても、見たいテレビであっても、良いのです。その活動自体に触れる機会がなければ、その楽しさすら知る機会はないのです。
ちなみに、要求は最も重要なスキルの一つで、人間一生涯勉強し続けると言って良いでしょう。例えば会社に入りたい時には履歴書を書いて応募して、面接を受けます。大学に入りたいときは試験を受けます。会社の商品を売りたい時には、色々なプレゼンをしたり会話術を上達させたりする必要があるかもしれません。子どもでも、欲しい物を指定したり、丁寧にお願いしたり、視線を合わせたり、適切な音量で言ったり、色々なレベルの要求の仕方があります。親御さんによっては、「この子は要求はできるから目標にしなくても良い」などと大まかなことを言われる場合もありますが、要求のスキルを学びきってしまう事はあり得ない事なので、要求はいつも目標の中に入っていると考えても良いでしょう。
子どもの「したい」という動機を使って物事を教える際、子どもをしっかりと観察する事が必要になります。ジュースが欲しくてさっきまで「ジュース」と言っていたのに、3分後にはジュースを要求できなくなることもあります。たくさん飲めばジュースに対する「欲しい」動機は減りますし、安定して口で要求出来るまで、さっきまで言えた事が今は言えないということもあります。(この経験を繰り返して徐々に安定して口で要求できるようになると考えてください。)話し言葉は首を絞めて声を絞り出させる訳に行かないので、特に注意が必要となります。もし声がでないときは、指差しさせたり、うなずかせたり、代替の要求に替えるといいでしょう。「欲しい」動機があまりに高いときも注意が必要です。泣いたり問題行動を起こしたりといった確率も上がります。
こういった例があります。子どもがジュースが欲しくて冷蔵庫を開けました。お母さんは冷蔵庫のジュースを取って、「ジュース」と子どもに繰り返すように指示します。子どもは何も言いません。お母さんはジュースを見せながら、「ジュース」と繰り返します。このまま進展せず2分くらい経った頃、子どもはお母さんを噛んで、ジュースを奪いました。
この場合、子どもが明らかに言葉で言えない状況です。子どもの表情や行動を観察しながら対応を変える事が大切ですので、教え方を何も変えずに2分待たせたのはちょっと問題です。代わりに、最初は指差しさせたりうなずかせたりさせて、まず少しジュースをあげます。2回目、3回目で「ジュース」と言えるようになっても良いのです。昨日「ジュース」と言ったから必ず今日はジュースと言えるというように、直線的な学習の仕方をしない場合が多いので注意しましょう。大事なことは、何度も繰り返し機会を与える事です。機会が増えるに連れて、徐々に言えるようになるのです。
※このコラムは、弊社最高臨床責任者の竹島より許可を得て、下記URL先のサイトから転載しております。
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