どのタイミングで教えるの?
一日のスケジュールを振り返りましょう
モチベーションのコラムで話した通り、基本的に子どもが何かしたい時に合わせて色々な事を教える事がやりやすいです。具体的に言えば、テーブルに座らせてプリントをやりながら数の課題をやらせるよりも、食べたい時に家族全員分のスプーンの数を数えさせたり、おやつのお菓子の数を当てさせたりする方が、断然モチベーションが上がって学習が進むのです。靴下の履き方やチャックの上げ下げを教えるのも、外に出たい時に靴下を履いてジャンパーを着るときに教えることが一番でしょう。
でも、お出かけ前って、忙しいですよね?ついつい、時間がなくて親が靴下を履かせてしまっていませんか?ですから、出かける前にある程度の時間的余裕を最初からスケジュールに組み込んでおくことが、一番効率的に教えることができる秘訣なのです。
自然の流れを利用して教えるには、一日の生活を振り返ってみて、どこにどういったチャンスがあるのか(子どもが学びたくなる動機が隠れているのか)、どういった行動をどのタイミングで教えられるのか時間を追って振り返ってみることを勧めます。1日を振り返る少しの時間が、その場その場で後手後手に回るのではなく、準備してこちらのペースで1日を過ごすことに繋がるのです。例えば朝8時に朝ご飯を食べるのであれば、食事の準備のお手伝い(例:茶碗や箸などを机に持って行く事)や、要求のスキル(例:好きなふりかけやお茶碗を選ぶ)、微細動作(フォークの使い方)、食事のマナー(例:椅子に座って食べる)など、これだけでも4種類のターゲットを教えることができるでしょう。注意点としては、一度にあまり欲張ってしまい、子どもも親もグッタリとしてしまうことを避けるために、活動中に教えたいターゲットの数をある程度限定することです。
問題行動の対処にも、時間割・予定での振り返りが役に立ちます。どういう問題行動が、どのタイミングで起こるのかを振り返り、問題行動が最初から起こりにくいような予定を立てるようにします。例えば一度公園に行ったら、家に帰りたがらない子どもがいるとします。「帰るよ」と言われると泣いて拒否します。この子の場合、お腹が減る少し前に公園に出かけるようにします。そして、遊びが終わって完全にお腹がすいた頃に、「帰るよ」という代わりに「帰っておやつの時間だよ」と伝
えます。必要であれば、お菓子の包み紙などを見せても良いでしょう。おやつを食べたい動機を利用する事で、ただ家に帰る指示を出すことと比較して、容易に家に帰ることが可能かもしれません。
同じように空腹を満たすだけでも良い場合があります。例えばマクドナルドの前でポテトが欲しくて泣くとか、スーパーに行くとお菓子食べたくて泣くとか、まずは空腹を満たしてから出かけるだけでも、問題行動が減る場合があります。また、問題行動が起こるとわかっているなら、最初から親自信が時間と心に余裕のある時に出かけることが大切です。
特に発達に遅れがある場合で言えば、「勝手にして良い時間(自由遊び)」を持てます子どもが多いです。何をしても良い時間は、問題行動が起こりやすい時間になってしまうことも非常に多いです。最初から「このゲームとこのオモチャ、どっちで遊ぶ?」などの選択肢を与えたり、「この部屋にあるオモチャで遊んでてね。」と、ある程度の枠組みを与えたりすることも必要でしょう。場合によっては遊び自体が全然できない子どももいるので、徐々に「適切に遊ぶ」ことを教えて行ったり、興味の幅を広げて行くことも重要です。お母さんやお父さんが遊びに入って、少しずつで良いので「ああ、こんな遊び方もある」「これって意外に楽しい」という経験をさせてあげて下さい。いろんな遊びを楽しめれば楽しめるほど、勉強ですら強制的にやらされている「課題」ではなく、楽しい遊びの一部になってきますから、学習が進むのです。遊び方を教える時間も、スケジュールの中に組み込む必要があるでしょう。
最後には、お母さんやお父さん自身の時間も計画に埋め込んでいくことです。意外に思われるかもしれませんが、子どものためを思うあまり「私が頑張らなければいけない」と自分の体に無理をした計画を立ててしまいがちです。息抜きも全然ない計画を立ててしまっている場合、長続きできません。短い1日の中でどうやったら自分自身の時間を効率よく取れるのかが、教育を長続きさせる重要な鍵になってきます。さらに言えば、良い意味で手を抜くことも大切です。将来的に親自身が楽になるような目標を立てると良いのです。例えば、本が好きになる子どもを育てていけば、自分で勉強して行きます。適切な遊びを教えれば、子ども自身が身の回りのことができれば、コミュニケーション上手になれば、こういった1つ1つの適切な行動が、ひいては自立した子どもの成長に繋がり、親のフリータイムも増えるのです。生活を振り返ることから、長期的に子どもと親の両方にとって価値のある教育を組み立てて行きましょう。
※このコラムは、弊社最高臨床責任者の竹島より許可を得て、下記URL先のサイトから転載しております。
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