発達が気になるのに、療育センターは6ヶ月待ち?
発達の遅れや行動特性が気にはなっているけれど、療育センターに連絡したら、予約を取るだけでも何と数ヶ月もの待ちがあった、そんな体験を聞くことがあります。「今気になっていることがあるのに」という親の焦る気持ちに、「数ヶ月待ち」と言う言葉が大きく立ちはだかって、心が折れそうになるかもしれません。せっかくの成長の機会を逃してしまうかも?と、不安も高まります。
ちなみに豆知識として、「療育センター」ってなんでしょう?実は現在「療育センター」「療育園」「発達センター」「児童発達支援センター」というものが全国で混在します。基本はどれも発達に懸念のある子どもの支援を目的としてある機関ではあるのですが、改正児童福祉法(2012年)に基づいて、地域の中核となる発達の支援の機関となるようできたものが「児童発達支援センター」と言うもので、現在徐々にその数が増えています。その他はこの法律ができる前の通称で、市町村によっては「療育センター」「療育園」「発達センター」などと違う名前で呼ばれてきました。法律上「児童発達支援センター」よりも多くの機能を含んでいたり、逆に満たさなかったりします。ここでは一般的な呼び名の「療育センター」とします。
療育センターが一般的に担う役割として、大きくは3つあります。
1.療育ニーズのアセスメント(発達検査、面接等)
2.相談支援事業(サービス等利用計画の作成)
3.療育の提供(児童発達支援のような、通所による療育)
療育は誰にでも必要な訳ではありません。まずは、①療育のニーズを発達検査や面接等で明らかにし(アセスメントし)、それに従って、②「サービス等利用計画」を立てます。この「サービス等利用計画」は、障がい福祉サービスの利用申請に必要な書類で、それをもとに市町村の自治体が「受給者証」と言うものを発行します。この「受給者証」によって、③「児童発達支援」のような療育サービスが開始できるのです。(上記3つの他にも、④保育所等訪問(園や学校への訪問観察とコンサルテーション)や⑤医療機能(医療型の施設の場合)を含む場合もありますが、ここでは省略します。)この一連の作業をワンストップでできるところが療育センターの利点で、多くの人が待っている時があるのも、理解できます。
では、療育センターに長い順番待ちがある場合、やはり療育を始めるには、それを待つ必要があるのでしょうか?実は、その必要はありません。「受給者証」の発行を受ければ、療育センター以外にも「児童発達支援」の事業所は民間に複数存在し、療育サービスを受けることができます。療育を受ける時期は早い方が良いとも言われており、療育を受けない空白の時間を作ってしまうよりも、保護者のできる範囲で行動に移し、できる限り早く療育サービスにつながることが得策でしょう。実際のところを言うと、療育センターを通さずに、受給者証を得てサービスを受けておられる方が大勢おられるので、そのやり方をぜひ知ってほしいのです。
「児童発達支援」の療育サービスを受けるには「受給者証」が必要で、市町村などの自治体(市役所、区役所など)の障害福祉課などの窓口が発行します。市町村によって申請書類は多少違うのですが、大まかには①支給申請書類、②発達に支援が必要だとわかる書類、③「サービス等利用計画」、④マイナンバーなどを揃える必要があるのです。
②の発達に支援が必要だとわかる書類は、医師からの診断書や、心理士や保健師などの専門職の発行する書類などを言います。「診断がなければ(手帳がなければ)、受給者証を受けられない?」と心配しなくても大丈夫です。乳幼児健診などで保健師のフォローが入っている場合は保健師に、そうでなくても保護者が気になる場合は自治体の発達相談で(自治体によって相談先の名前は変わります)、相談してみましょう。その他にも、例えば「発達障がい疑い」など、少なくとも支援のニーズがあるということを医師に一筆書いてもらうことで十分な場合も多いので、発達を専門とする児童精神科など、医師に相談することも良いでしょう。
③の「サービス等利用計画」というものは、相談支援事業所が立ててくれるのが理想的で、相談支援事業所を自治体に紹介していただくこともできます。ただし相談支援事業所も、実は順番待ちがある場合もあります。この場合は「セルフプラン」と言って、自治体の出す「記入例」などを見ながら保護者が記入することも可能です。(すべての自治体が記入例を出している訳ではありませんが、書類の記入例を多数の自治体がWebサイト上で載せていますので、書式が似たようなものを選んで、参考にできるでしょう。)ご利用されたい療育先(児童発達支援の事業所)が既にある場合は、見学等で訪れた際に、受給者証申請のお手伝いをお願いすると良いでしょう(事業所は受給者証申請のお手伝いすることが義務付けられています)。いずれにせよ受給者証の申請手続きと並行して、療育先を見つけておくと、受給者証発行からスムーズに療育の利用につなげることができるでしょう。
療育センターで一連の流れをワンストップでやってくれる場合と違って、保護者が申請するには、それなりに時間は取られます。しかし、子どもの発達の大切な療育の時期を逃してもらいたくないのも事実です。「私にも申請できるかも?」と思ってもらえると嬉しいです。
※このコラムは、弊社最高臨床責任者の竹島が執筆しております。下記URL先のインスタグラムも是非ご覧ください。
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